日本人のための日本語ワークショップ

https://www3.nhk.or.jp/lnews/kanazawa/20181218/3020000604.html

12/18(火)、石川県金沢市にて、午前は北陸の企業30社、また午後は金沢大学及び北陸大学教職員のみなさま向けに、「日本人のための日本語ワークショップ」を開催し、午前のワークショップについて、NHK石川にも当日のニュースとして取り上げていただきました(上記リンクをご参照ください)。どちらも全ての資料に触れることはできませんでしたが、概ね以下の内容で進めました。

1、
JASSOからご提供頂いた石川県内の留学生情報をみなさまと一緒に確認しながら、留学生のトレンドと彼らのキャリアプランなどを確認。採用時点で防げる入社時のギャップについてご説明しました。

2、
採用後の定着という視点から、外国人スタッフが陥りやすい異文化ギャップとして、ワークスタイル、労務、価値観を挙げ、その具体的な事例を共有。これらは、採用前に防げる部分と、入社前後で対応できる部分があり、その対応方法についてご説明しました。

3、
社内公用語が日本語の企業内(または留学生支援を行う大学機関内)で起きがちな日本語コミュニケーション事例の理解と、それを解決するための日本語コミュニケーションワークショップ(日本人のための日本語ロールプレイング)。日本人には気づかない日本語のリスクについてご案内し、実際に日本人役と外国人役の2人1組で日本語コミュニケーションのロールプレイを行いました。

この中で、お問い合わせが最も多い、3つ目の「日本人のための日本語ワークショップ」について、今日は少しご説明したいと思います。

一般に、日本企業が外国人を雇用するにあたって、そのコミュニケーションギャップを解決するにはいくつかのアプローチがあります。1つは英語を社内公用語として取り入れることです。しかしこの手法は、貿易、観光、IT、オフショア、エンジニアリングなど、事業として海外ビジネスないし外国人に関わっているか、グローバル展開を事業として広く視野に入れていないと、なかなかオプションになりません。

そこで多くの企業は何をするかというと、外国人スタッフへの日本語教育を導入します。弊社も、留学生ではなく日本で働く外国人スタッフに特化した日本語教育事業を行っているため、こういったニーズに長く対応してきましたが、かなりの予算をとって外国人スタッフ向けの日本語教育サービスを導入する大手企業がある一方、外国人スタッフ個人に学習の判断を全て委ね、部分的にそれらを金銭的に補助する形をとる企業もあるなど、教育コストの考え方もまちまちなのが現状です。また、外国人スタッフへの日本語教育は、日本人スタッフの英語教育と比べ、どうしても少数派となるため、予算のおりにくさもあります。加えて、企業によりますが、せっかく教育しても短期間で辞められてしまうリスクを抱える企業も少なからずあるのが現状です。

ここで、皆さんが見落としがちな選択肢があるのですが、お気づきでしょうか。それは「日本人スタッフへの英語トレーニング」でも、「外国人スタッフへの日本語トレーニング」でも、ましてや「外国人スタッフへの英語トレーニング」でもありません。最も盲点となっていて、おそらく最も効率的なのが「日本人スタッフへの日本語トレーニング」です。

日本人は、その多くが第一言語(母語)として日本語を習得している、ネイティブ日本語スピーカーです。ネイティブは、無意識に母語を使えるので、逆に、母語を外国語として捉えることはまずありません。外国人の日本語学習について、ほとんど何も知らないまま、採用時、多くの企業の日本人スタッフは、外国人側に「ネイティブレベルの日本語」を求めるだけで、自分たちの日本語について考えることはほとんどありません。しかし日本語ネイティブの日本人同士でのコミュニケーションと、外国人と日本人との日本語コミュニケーションとは、別のコミュニケーションです。お互いが上手にコミュニケーションをとろうと思う段階で、両者にできることがあります。もちろん外国人側は外国語として日本語を学ぶ必要があります。これと全く同じ視点から、日本人側も、外国語としての日本語(外国人の日本語・中間言語としての日本語)を知っておくと、様々な利点があります。

弊社が様々な場で「日本人のための日本語ワークショップ」を展開しているのは、こういう考え方が背景にあるからですが、実は、相手がわかるような日本語表現を選択したり、相手の日本語レベルに合わせて、その意味を確認したりしながらコミュニケーションをとるなどの参加型トレーニングを繰り返し行い、無意識にではなく、自ら意識して相手に合わせた日本語表現を選択できるようになると、相手が外国人ではなく、日本人でも、そのコミュニケーションが円滑になります。特にこれは、世代のギャップが大きい日本人同士など、前提としている常識や価値観が離れていれば離れているほど効果が実感しやすいのですが、このトレーニングが文化的な背景の最も異なる外国人とのコミュニケーションを基準にしていることを考えれば、外国人ではなく、背景の異なる日本人同士のコミュニケーションにも良い効果があるというのは、ごく自然な帰結だということもできるでしょう。

社内公用語を英語にする、外国人スタッフの日本語教育を導入するなども、外国人採用後の人財定着に関する有効なアプローチだとは思いますが、両者にはかなりの時間(コスト)がかかると思います。これらに比べ、ネイティブ日本語スピーカーのための日本語トレーニングは、いわば階段を上がるのではなく、階段を降りることにそのトレーニングの目的があります。適切なメソッドでトレーニングを進めると、階段を上がるよりもコストはかからず、またその効果も早い段階で実感できますが、階段の降り方にはコツがあります。

ぜひ、双方向という視点に基づき、外国人スタッフと共に働く場合の日本語コミュニケーションについて、日本人側の皆さんにも色々な選択肢を考えていただければと思います。

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