大阪府グローバルジョブフェア
2018年10月2日(火)梅田クリスタルホールにて、大阪府の予算でグローバルジョブフェアが開催されました。
http://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/index.php?site=fumin&pageId=31915
私はJETROから派遣される形で、午前の外国人財向けオープニングセミナーに講師として登壇させて頂き、その前後の時間で、外国人採用について課題や質問がある大阪の複数の企業様と個別にお話をしました(写真)。
東京でも状況はあまり変わりませんが、そもそも外国人の就職支援、特に国内大学に在籍する外国人留学生への就職支援というと、それは日本人向けのサービスを言い換えただけの内容であることがほとんどです。すなわち、新卒一括採用を前提として、横並びの応募と採用が繰り返されるマス向けサービスを、外国人にも利用させるということになっています。それは自己分析であり、業界研究であり、エントリーシートの書き方であり、面接対策です。全て、日本人と同じです。もちろん、これらのテーマについて、外国人にローカライズして伝える努力は多くの支援機関の方が取り組んでいらっしゃいますが、一方で、在留資格や労務管理など、外国人特有の問題だけを取り上げて外国人留学生だけに伝えるという取り組みはあまりみられません。ここでも、日本人の当たり前と外国人の当たり前のギャップがみてとれます。
中曽根政権の留学生10万人計画の時代において、日本にいる留学生のうち、その多くが中国と韓国からの人財でした。つまり、語彙的には日本語と近い国の人たちです。日本語の読み書きが得意な彼らは、読み書きの能力に基づいて多くが大学から選抜され、在学しながら日本語力を高め、そして卒業前に日本式の就職活動を行ってきました。いわば、留学生が日本人に合わせる時代が長く続いていました。
しかし、状況は一変しました。2011年の震災の直後、多くの中韓の留学生は帰国し、韓国人留学生に至っては(最近はやや復調ですが)かつてのような留学生総数に占める圧倒的な存在感はもはやありません。そして代わりに台頭してきたのが、ベトナムやネパール、スリランカなど、日本語と語彙的には遠い、非漢字圏からの留学生です。漢越語を語彙にもつ儒教文化圏のベトナム人であっても、漢字語彙の理解があると圧倒的に有利となるJLPTテストのN1となると、中韓人財と比べ、全体的にはかなり苦戦している印象があります。中韓人財と、新興の非漢字圏留学生とは、その日本語の背景がかなり異なるということは、これをお読みのみなさまに理解して頂きたい一つのポイントになります。
この結果、日本語教育機関(いわゆる日本語学校)を卒業した留学生たちは、主に
1、日本語の読み書きに長け、人気のある大学に進学した留学生
2、日本語の読み書きは得意でなくても入学できる大学に進学した留学生
3、技術などを学ぶため、大学ではなく専門学校を志望して進学した留学生
4、大学や専門学校への進学に失敗し、不本意な専門学校に進学した留学生
5、そもそも進学に興味はなく、就職活動を経て就職が決まった留学生
6、帰国した留学生
の6つに分類できます。上記の数字でいうと、かつての中韓人財は(もちろんこれ以外の方々もいらっしゃいましたが)概ね1と3がその主流派だったと思います。しかし、特に人数でいうと、現在は、むしろ2と4が急増、5と6が微増といったところではないでしょうか。かつての主流派だった1と3が微増だとしても、留学生の中身が今までとは異なるということを、国内留学生の採用をご検討の企業の皆様には特にご理解頂きたいです。
では、留学生を受け入れている学校機関がその対応を変えたのかというと、急増する受け入れ数の一方、なかなか留学生の求めるニーズに追いついていないのが現状ではないでしょうか。それは、冒頭で申し上げたような、就職という一場面をみるだけでも理解できることです。在学中の教育内容を含め、これは今の段階で外国人留学生の抱える大きな課題となっていると思います。
震災後、留学生の質の変化に真っ先に対応せざるを得なかったのは、大学ではなく、その手前で留学生を受け入れている 日本語学校の教師たちでした。当時のことを思い出すと、学内で行われた勉強会などでは、しきりに「非漢字圏」への教育をどうするのか(特に発音教育、語彙教育、漢字教育)といったテーマが多かったと記憶しています。そして、この傾向は、今でもあまり変わりません。たとえば先月も、週末のとある日本語教師向けの勉強会イベントで、真っ先に日本語教師を集めて満席となったのが、非漢字圏向け教育の勉強会でした。
留学生の「量の」変化に対し、非漢字圏人財の台頭に伴う教育の「質の」変化が追いついていない現状については、 2018年7月にJAMCA(全国自動車大学校・整備専門学校協会)会報誌へ寄稿した拙文「留学生教育の現状と課題」でも触れた通りです。
今後、多様化の一途を辿る外国人留学生の支援の方向性がどこへ向かっていくのか、そんなことを考えながら、帰りの新幹線で、いそいそと留学生からの相談メールに返信をしていました。