JLPT(日本語能力試験)の活用方法

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http://info.jees-jlpt.jp/info/2018%E5%B9%B4%E7%AC%AC2%E5%9B%9E%E8%A9%A6%E9%A8%93%E5%AE%9F%E6%96%BD%E6%A1%88%E5%86%85.html

先日、2018年7月のJLPTの結果が出たばかりですが、早くも12月のJLPTの申し込みが始まりました。結果が早くわかるので、申し込みはオンラインがおすすめです。申し込みの締め切りは9/26(水)までです。テストは12月ですが、締め切りはもうすぐですね。JLPTはいつもこんな感じです。

1年に2回のこのテストについて、外国人の日本語レベルを知るためのテストとして重視する企業も多い中、その内容はあまり知られていません。つまり、採用や評価の基準として、このテストを理解している企業がかなり少ないと感じています。

https://event.tokyo-cci.or.jp/event_detail-88280.html

10/19(金)の東京商工会議所主催セミナー(ゼロからわかる! 「外国人留学生」採用のイロハ )でも少しだけお話するつもりですが、今回は、企業でもよく目にすることのある、JLPTテスト(日本語能力試験)のポイントを簡単に整理してみます。

・5つのレベルのテストがあり、難易度が異なる。N5は最も簡単なレベルで、数字が小さくなるごとに難しくなる。

・どのテストも満点は180満点だが、それぞれ3つの分野に分かれており、各分野の配点は60点ずつである。(注1)

・合否は総合得点で決まるが(レベルにより合格点が若干違うが、概ね50〜60%くらいの総合得点で合格)、分野ごとの「足切り」がある。(注2)

・出題のスタイルを考えると、基本的に読解力を知るためのテストであり、コミュニケーションのスキルは正確には分からない。(注3)

・同じ理由から、漢字圏の外国人には有利で、非漢字圏の外国人にとっては難しいテストとなっている。

(注1)3つの分野とは以下の通りです。N4,5は少し設計が異なりますが、分野自体はほぼ同じです。

・言語知識(文字、語彙、文法)

・読解(リーディング)

・聴解(リスニング)

(注2)これもN4,5は少し異なりますが、N3〜1については、各分野60点満点のうち、基準点(19点)に達していない分野が1つでもあると、総合得点がどんなに良くても不合格となります。

(注3)コミュニケーション能力についても誤解が多いポイントです。コミュニケーションは、語彙や文法をインプットする作業と、それをアウトプットする作業の2つが必要になりますが、JLPTでは基本的に前者の到達レベルしか分かりません。つまり、日本語コミュニケーションの必要条件の到達レベルはある程度分かりますが、しかしそれは充分条件ではないため、結果としてコミュニケーション能力はわからないということになります。私が会って話したことがある1,000名の外国人財の中にも、N1を持っているものの、何も(挨拶も含めて、何も)話せない人がいました。漢字圏人財の方々です。

外国人財の採用を行う企業で、特に社内公用語が日本語の企業、またはJLPTを採用基準の1つにしている企業にお願いしたいのは、以下の2点です。

1まず、外国人の日本語レベルを判断する(議論する)前に、企業側が外国人に準備した仕事(特に通常業務)の内容を洗い出し、「読む」「書く」「話す」「聞く」4つのスキルについて、必要なレベルを設定しておくことです。4つのスキルそれぞれについて、具体的に想定している日本語レベルを社内で共有しておく必要があります。なお、経営者の意向と現場マネージャーの意向が採用担当と共有されていないと、採用後、マネジメントで失敗しやすくなるので注意が必要です。

2次にお願いしたいのは、採用過程で、その人財の日本語力を適切に把握することです。ここまで読んで頂いた皆さんには気づいて頂けたと思いますが、通常の面接でわかるのは、「話す」スキルだけです。

当たり前すぎるので、業務として意識されないこともありますが、たとえば日本語の社内メールが通常業務の一部として設定されていて、しかも文書でのやり取りが多く、業務の重要度としても高い、そんな業務のポジションで外国人財を採用する場合、当然、その方の「読む」「書く」スキルを事前に把握しておかないといけないということになります。これはむしろJLPTが指標として機能しやすい分野なのですが、JLPT取得レベルの口頭確認だけをして、証明の提出を求めないどころか、総合得点や、分野ごとの得点を確認しようとすらしない企業が多いのが現状です(こう言った理由の1つとしてJLPTに対する理解不足があるのではないかと思い、私はこのブログを執筆しています)。

***

最後に、外国人スタッフの日本語に関して、おそらくは最も多い誤解について触れておきます。それは、日本語能力=業務遂行能力ではないということです。

特に外国人に慣れていない企業は、日本語を「話す」スキルを極端に重視しがちです。この時、前述のような「必要な日本語レベルの設定」ができていないと、期待している業務内容で必要な日本語スキルではなく、いわば「おしゃべり」の日本語レベルで人財採用に踏み切ることになる可能性が高まります。1と2の作業を企業に私がお願いしているのは、こういう背景からでもあります。

日本語がネイティブの日本人が、「なんとなく」その人財の日本語レベルを評価するのではなく、外国人財の日本語レベルを適切に評価し、業務内容と照らし合わせた上で、その人財の業務遂行能力を「公平に」評価することは、その後の外国人財マネジメントや、人財にとっての働きやすさ、または人財からの企業の評価(価値)を高めるという観点からも、非常に意味があることだとご理解頂きたいと思います。

執筆者
内定ブリッジ株式会社
代表取締役 淺海一郎

省庁やJETRO、全国の自治体、大学などと連携して全国の外国人雇用企業に対し、社内体制の整備、異文化コミュニケーション、外国人スタッフの育成定着と戦力化に関する研修、ワークショップを数多く提供しています。また、ビジネス日本語教師の立場から、海外日本語教師の育成にも携わっています。

外国人の雇用は、日本で働く外国人もさることながら、一緒に働く日本人側にも負担がかかりますが、工夫次第でうまくいきます。日本人と外国人がともに働きやすい環境を作るためにどのような点を工夫すればよいか、できる限りわかりやすくお伝えしたいと考えております。

【委員等の実績】
日本貿易振興機構(JETRO)高度外国人材スペシャリスト(現任/通算7年目)
・厚生労働省「外国人労働者雇用労務責任者講習検討委員会」委員(現任/2年目)
・東京都産業労働局「東京外国人材採用ナビセンター」企業相談員(現任/3年目)

・文化庁「日本語教育推進関係者会議」委員(2021-2023)
・広島県「特定技能外国人受入モデル企業」支援アドバイザー(2023)
・独立行政法人 国際交流基金 客員講師(2019-2023)
・文化庁「就労者に対する初任日本語教師研修教材開発」カリキュラム検討委員会委員(2020-2022)
・厚生労働省「外国人の能力開発に関する専門研修」検討委員会委員(2022)
・経済産業省「職場における外国人材との効果的なコミュニケーション実現に向けた学びのあり方に係る調査事業」アドバイザー(2020)
・厚生労働省「雇用管理に役立つ多言語用語集の作成事業」有識者研究会委員(2020)
・東京都「外国人材活用に関する検討会」委員(2020)
・経済産業省「外国人留学生の就職や採用後の活躍に向けたプロジェクト」政策検討委員会委員(2019-2020)

この他、厚生労働省、文化庁など各省庁事業の技術審査委員を務める

【メディア掲載】
・朝日新聞デジタル(電子版・2024/3/7)「「次は家族と一緒に」外国人労働者の資格、広島県が後押しする理由」
・日本経済新聞電子版(2023/11/24)「「育成就労」どんな制度? 技能実習の転職制限、段階緩和」
・朝日新聞(全国版)・朝刊2面(2023/7/3)「日本語ペラペラ」求めるだけの企業は選ばれない 人材獲得の障壁に」
・日本経済新聞電子版(2021/12/26)「レベル高すぎ? 企業が外国人材に求める日本語力」
・共同通信(2022/12/2)Is “standard” Japanese test best metric for hiring foreigners?


・アイデム 人と仕事研究所「外国人スタッフの定着と戦力化を図る
向学新聞 連載「日本語のプロと考える ビジネス日本語」
全国自治体による、外国人スタッフへの日本語教育に関する助成制度の実態調査
ビジネス日本語研究会 2020年1月号ジャーナル 研究論文掲載(共著)
・jops biz「日本人社員と外国人社員のコミュニケーションギャップとは
・Knowledge Society「外国人と企業の懸け橋へ 日本語教師出身の創業者に独立の思いを聞く

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