JAPIイベントのご質問にお答えします

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https://www.japi-jayc.com/

先週の金曜日、一般社団法人日本国際化推進協会(JAPI)主催のカンファレンスイベント ”Japan ASIA Youth Conference” にお招き頂き、パネルディスカッション「外国人材が日本企業で活躍するために」に登壇させて頂きました。関係者のみなさま、ありがとうございました。当日は短い時間でしたが、入社後の外国人財にオフィスコミュニケーションを約10年教えている立場からみている、社内の日本語コミュニケーションのギャップや課題などについて、抽象的なお話を中心にさせて頂きました。

当日は、双方向のイベントという主旨のもと、ディスカッションをお聞きのみなさまからも、”sli.do”を使用し、リアルタイムで反応やご質問を頂いたのですが、進行の都合上、これらに全く触れることなくイベントは終わってしまいました。とても面白い質問も多かったのですが、私宛てに頂いた具体的なご質問が1つあり、また当日の構成上、私の話が抽象的な内容に偏ってしまったこともあるので、こちらできちんと回答させて頂きたいと思います。

会場からのご質問

「浅海さんにお聞きしたいです。会社の現場として、ネイティブもしくはビジネスレベルの日本語を求めていることに対し、実際そのレベルに達している人材は少ないです。そこに対し、どうやって現場を説得していますか。」

回答(淺海)

「説得」となると、すでにギャップが顕在化しており、おそらくはこの管理職の方にとって、ハードルの高い状況に至っているものと拝察しますが、こういった状況を未然に防ぐという意味において、説得の段階の前に、3つのチェックポイントがあるので、ここからお示ししたいと思います。

まず、その人材の採用目的を社内で共有しているかどうか(社長、管理職、人事、直属上司、日本人同僚などを含めたスタッフ内で同じ意識を持てているか)が一つ目のチェックポイントです。よくあるパターンですが、これができていないと、その人財の日本語スキルが(その人が日々の業務を行っていく上で相対的に)低い場合、「社内でその人財の採用目的を理解できていない人」が真っ先に不満を抱きます。彼らは、「日本語もできないくせに、一体なんのために採用された(採用した)んだ。会社のお荷物だ」という発想をしがちで、これだけで充分にオフィス内の不協和音になります。逆に、「こういう背景があって、こういう目的でこの人財は採用された」という理解が(特に中小企業の場合)全社でしっかり浸透していれば、日本語力の低さや業務遂行上の課題を抱えていたとしても、その課題に対して周りのスタッフや上司がフォローアップしやすくもなります。こうなると格段にこの人材も仕事がしやすくなります。

次の段階のケースを考えてみます。採用前に採用目的を社内でしっかり共有できていた場合も、同じく採用前の段階で、その人財の業務で必要とされている日本語スキルがきちんと設定されていたかどうかが、次のチェックポイントになります。必要な日本語スキルというのは、読む・書く・聞く・話す、の4つのスキルごとに設定されていることも大事です。よくある誤解ですが、この4つのスキルは、同じ人の能力として、ばらつきがあります。同じ人であっても、漢字を読むことができても書けなかったり、会話が得意でも読み書きが苦手な人がいたりするということです。だからこそ、その人財にしてもらいたい業務を洗い出しておき、その業務に必要な4つのスキルのそれぞれのレベルを設定しておくことが必要になります。適切にこの点を評価したり設定したりできるようになると、人財自身のストレスも減りますし、それ以上に、業務を依頼する(日本人)側の負担もかなり軽減されます。

さらに次の段階は、設定した「業務に必要な日本語スキル」を、採用活動の中で適切に評価していたか、というチェックポイントです。必要なスキルが分かっていても、面接や書類で、本人の日本語スキルを分析できていないと、採用後、日本人側から「こんなはずじゃなかった」という声が聞こえてきても、全くおかしくはありません。また、採用後の伸びの部分を含めて評価できると、その後の評価にも妥当性が生じやすくなります。JLPTに依存し、しかもその内容を確認せずになんとなく面接で日本語力を測定する、というような採用をしていると、採用時の評価がうまくいかないばかりか、採用後の外国人材の日本語スキルの伸びについても想定できないままです。つまり、採用側の「日本語を評価する力」も伸びません。外国人財は外国語として日本語を学んでいるので、採用側も「外国語としての日本語」に関して理解を深めた方がいいというのが私の持論ですが、皆さんはいかがお考えでしょうか。

ここで3つのポイントを整理します。

・採用目的の共有

・業務に必要な日本語スキルの設定

・人財の適切な日本語スキル評価

これら3つのポイントが実際にできていると、ご質問にあるような状況自体が起こりにくくなるということを理解して頂きたいです。今後の外国人財の採用に生かしてください。

さて、もしご質問の方の社内の状況が、すでにこれらのポイントをおさえずに採用し、現場の日本人から不満が聞こえてくるということなら、まず、すでにご案内した3つのポイントを社内で検討し、どこがボトルネックになっているのか考えてみてください。1つ目のポイントとなっている採用目的の共有をやり直すことで解決する部分もあります。しかし、残り2つのポイントから問題が起きているなら、今からでもいいので、すぐに本人の日本語スキルを再度評価し直し、また人財の行っている業務で必要な日本語を見直すことで、どこにギャップの根っこがあるのか、整理してみた方がいいです。その上で、本人の日本語以外を含めたスキルにあった業務や、本人のモチベーションも維持できるような業務(今の本人のスキルが生かせる業務)を検討してみて頂きたいです。

執筆者
内定ブリッジ株式会社
代表取締役 淺海一郎

省庁やJETRO、全国の自治体、大学などと連携して全国の外国人雇用企業に対し、社内体制の整備、異文化コミュニケーション、外国人スタッフの育成定着と戦力化に関する研修、ワークショップを数多く提供しています。また、ビジネス日本語教師の立場から、海外日本語教師の育成にも携わっています。

外国人の雇用は、日本で働く外国人もさることながら、一緒に働く日本人側にも負担がかかりますが、工夫次第でうまくいきます。日本人と外国人がともに働きやすい環境を作るためにどのような点を工夫すればよいか、できる限りわかりやすくお伝えしたいと考えております。

【委員等の実績】
日本貿易振興機構(JETRO)高度外国人材スペシャリスト(現任/通算7年目)
・厚生労働省「外国人労働者雇用労務責任者講習検討委員会」委員(現任/2年目)
・東京都産業労働局「東京外国人材採用ナビセンター」企業相談員(現任/3年目)

・文化庁「日本語教育推進関係者会議」委員(2021-2023)
・広島県「特定技能外国人受入モデル企業」支援アドバイザー(2023)
・独立行政法人 国際交流基金 客員講師(2019-2023)
・文化庁「就労者に対する初任日本語教師研修教材開発」カリキュラム検討委員会委員(2020-2022)
・厚生労働省「外国人の能力開発に関する専門研修」検討委員会委員(2022)
・経済産業省「職場における外国人材との効果的なコミュニケーション実現に向けた学びのあり方に係る調査事業」アドバイザー(2020)
・厚生労働省「雇用管理に役立つ多言語用語集の作成事業」有識者研究会委員(2020)
・東京都「外国人材活用に関する検討会」委員(2020)
・経済産業省「外国人留学生の就職や採用後の活躍に向けたプロジェクト」政策検討委員会委員(2019-2020)

この他、厚生労働省、文化庁など各省庁事業の技術審査委員を務める

【メディア掲載】
・朝日新聞デジタル(電子版・2024/3/7)「「次は家族と一緒に」外国人労働者の資格、広島県が後押しする理由」
・日本経済新聞電子版(2023/11/24)「「育成就労」どんな制度? 技能実習の転職制限、段階緩和」
・朝日新聞(全国版)・朝刊2面(2023/7/3)「日本語ペラペラ」求めるだけの企業は選ばれない 人材獲得の障壁に」
・日本経済新聞電子版(2021/12/26)「レベル高すぎ? 企業が外国人材に求める日本語力」
・共同通信(2022/12/2)Is “standard” Japanese test best metric for hiring foreigners?


・アイデム 人と仕事研究所「外国人スタッフの定着と戦力化を図る
向学新聞 連載「日本語のプロと考える ビジネス日本語」
全国自治体による、外国人スタッフへの日本語教育に関する助成制度の実態調査
ビジネス日本語研究会 2020年1月号ジャーナル 研究論文掲載(共著)
・jops biz「日本人社員と外国人社員のコミュニケーションギャップとは
・Knowledge Society「外国人と企業の懸け橋へ 日本語教師出身の創業者に独立の思いを聞く

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